吉祥寺はあったかいっすよね
フォトグラファー 市川怜央

吉祥寺はあったかいっすよね
フォトグラファー 市川怜央

9月はじめの吉祥寺、この日は雨予報で少し涼しく、やっと秋を感じられるような雰囲気であった。打ち合わせがあり少し遅れるというので、サーティワン前のベンチで待っていると、彼は歩いて待ち合わせ場所に来てくれた。

2001年生まれ、19歳のフォトグラファーとして、スケートボードやスナップなどの写真を幅広く手掛ける市川怜央さん。最近では雑誌Rolling Stone Japan内の特集「音楽と写真」にて見開き2ページで掲載された。19歳とは思えないほどしっかりとしていながら人懐っこい彼は、まっすぐとした目をしながら私たちのインタビューに答えてくれた。まずは吉祥寺のスケートボードのメッカ、そして彼が写真を始めたきっかけの場でもあるスケートボードショップ「instant 吉祥寺ストア」へ向かった。

■ ”さとるくん”との出会い

ーーそもそもスケボーをはじめたきっかけは?

一番最初は小学生くらいの時に父ちゃんが自分の分と僕の分のスケボーを買ってきて、そんでなんか滑ろうよみたいな感じで始めて、最初はプッシュ(片足で地面を押す基本動作)してました。その後中学サッカーで忙しかったんすけど、その合間を縫ってトリックを練習して、みたいな。で5年前くらいからinstantに通ってますね。最初はお金とかなかったんで、板見て買えるか買えないか迷ったりして、購入目的で来てたんすけど、そのうちここ(instant)に来てダラダラする、みたいな(笑)

ーー店長の吉田智さんとの出会いは?

結構前まではさとるくんとも壁があって、そんなに交流できてなかったんですけど、でもさとるくんにスケートの写真を見せた時に、「本気でやってみなよ」って言われて。

ーー「さとるくん」って呼んでるのね(笑)

もう父ちゃんみたいな(笑)

THRASHER MAGAZINEを一冊渡されて、これみて勉強しなよって、そっから写真をちゃんと勉強して、それでお金を稼ぎたいなって思うようになった。「本気でやってみなよ」の一言がむちゃくちゃでかかったすね。周りの環境もあるけど、やっぱりいまでも写真を撮り続けられるっていうのも、さとるくんが後押ししてくれたから。

ーーそれさとるくんに言わないの?

いやあ、恥ずかしいっすね(笑)雑誌とか見てもらったりとかの方がありがたい。

いつもこのベンチがinstantを訪れる人のタマリバになっている

■スケボーカルチャーで仲間とつながる

ーーいつも撮影はどうやってるの?

いいスポットを見つけるとライダーの人が勝手にトリックをやりだすから、その場で自分が画角とかライティングとか全部考えます。撮るときはだいたいファインダーとか見ないで、しっかりタイミングを目で見て、撮る。その瞬間を撮ったらやばい写真になるって考えたら、結構言葉では言い表せないような気持ちよさがありますね。撮り終わったらとりあえず映像見て、その後写真みんなで見て、「これいいね!!」、「やばいね!!」みたいな(笑) スケボーっていうひとつのカルチャーで、みんなで作品を作れるのがいいっすね。

写真とか映像とかもそうなんですけど、スケボーって超奥深いんっすよ。どういう場所で撮るか、なんのトリックしてるところで撮るかっていうので、写真の雰囲気すら変わるので。例えば、キックフリップとか、一回転するんすけど、その一回転の直前で撮る、みたいな。そういうのがトリックごとにあって、それがめちゃめちゃ奥深いんですよ。撮り方も引きでとるとか、フィッシュ(魚眼レンズ)で下からとるとか、それで迫力とか写真の落ち着きとか全然違うし。一番撮っていて楽しい。

この場所でこうして立ちながらスケボーの映像を見ることが多いという

ーー写真でどこまでいきたい?

海外で活動したいですね。やっぱり海外の方が知ってもらう世界が広がるかなって思います。それまで日本でスケボーでも他でも、もっと自分の作品を残して仲間とワイワイできたらいいですね。自分の写真をいろんな人に見て欲しいし、人それぞれ作品を見て思うことが違うので、それを感じて欲しい。

「instantは寺子屋」と語る、店長の”さとるくん”とパシャリ

ハモニカは超リラックスできる場所

吉祥寺ってあったかいっすよね。最近僕ハモニカ行って思ったんすけど、ハモニカいると気持ち的にも超リラックスするんです。みんなお互いのこと知らなくても、ワイワイ話せるっていう、そういうのがあったかさじゃないっすかね。

大学とか卒業したら吉祥寺から一旦ちょっと離れて、また60歳とか70歳くらいに吉祥寺付近で家買う暮らしが出来たら最高ですね。その間転々と別の場所まわって、自分のやりたいことやって、みたいな。

ーー最後にみんなの知らない吉祥寺のいいとこ教えて!

丸井の前の「LEOPATRA KEBAB」ケバブライスの大盛りのミックス、ソース超辛目が最高!

DRIP MAGAZINEのTシャツを渡すと、その場で着替えてくれた

instant店長の吉田さんはお店に来る若者にこう語る。「ただ酒飲んでカラオケ行って遊ぶならそのへんの奴らと変わんないよ。だったら本気でやりなよ」と。レオくんが取材中ずっと言っていた「吉祥寺落ち着くっすよね、最高っすね」の言葉は、こうした吉祥寺の「人」によって支えられているのかもしれない。

<Profile>
市川 怜央イチカワ レオ
好きな一曲: 「Up and Down」東北新幹線
好きな映画: 「アニマル・ハウス」(1978)

<個展の情報>
市川怜央 写真展「19/19」
9月19日(土) - 9月25日(金)
Three PEACE studio 
渋谷区代官山町8-9 竜王ビル3F
http://threepeace.co.jp/special_content/threepeacestudio/

文・写真: 中村高太郎
インタビュー補助:Keisuke Nishino

DRIP MAGAZINEでは全ての取材で感染対策を徹底し、距離を保って撮影しております。

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